近視について

近視について

Myopia

近視とは

近視とは

近視とは、眼球が前後に長くなることで、目に入った光が網膜より手前でピントを結んでしまう状態です。

近視により、近くのものははっきり見えますが、遠くのものはぼやけて見えてしまいます。

特に、近視が強い場合、物を目の近くに持ってこないとはっきり見えません。

多くの近視は学童期に眼軸が過度に伸びる「軸性近視」と呼ばれるタイプで、眼鏡で矯正できる「単純近視」が一般的です。

ただし、まれにさまざまな病気を引き起こす「病的近視」に進行するケースもあります。

近視の強さ

近視の強さは「度数」で表されます。

この度数は、光を屈折させる力を示す単位である「ディオプター(D)」で測定されます。

普段使っているメガネの処方箋やコンタクトレンズのパッケージを見ると、自分の度数を確認できます。

近視の度数はマイナスで表され、数字が大きくなるほど近視が強くなります。

一方、遠視はプラスで表されます。

一般的に-6.00D以上の近視は「強度近視」と呼ばれます。

現代のメガネやコンタクトレンズの技術は進化していますが、度数が強くなるとレンズの端が厚くなり、装着時の見え方と裸眼での見え方の差が大きくなることがあります。

そのため、強度近視の患者様の中には、裸眼での視力回復を目指す治療法を求める方が増えています。

近視の進行

これまで「大人になれば近視の進行は止まる」と考えられていました。

しかし、最近では強度近視の人は大人になっても眼軸が伸び続け、近視が進行しやすいことがわかってきました。

また、近視が進むと、失明につながるリスクが高まる眼疾患にかかる可能性も高くなることが明らかになっています。

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近視の原因と要因

近視の原因と要因

近視の原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要素と環境が影響していると考えられています。

遺伝的な要因

近視は家族内で遺伝する傾向があり、両親が近視の場合、子どもが近視になる確率が高まります。

遺伝子が視力の発達や眼球の成長に影響を与えるため、特定の遺伝子の変異や組み合わせが近視の発症に関わっているとされています。

環境的な要因

現代社会における生活スタイルの変化が、近視の増加に関与していることが多くの研究で明らかになっています。

例えば、スマートフォンやタブレットの普及、近距離作業の増加などは目に大きな負担をかけます。

近視を防ぐためにバランスの取れた生活習慣を心がけることが重要です。

成長過程における近視の発生理由

眼軸の長さは成長に伴って伸びていきます。

新生児は眼軸が短く、ほとんどが遠視の状態ですが、角膜や水晶体の屈折力が強いため、視力に大きな問題はありません。

成長とともに角膜や水晶体の屈折力が弱まり、眼軸が伸びることで全体のバランスが取れるようになります。

しかし、環境要因などでこのバランスが崩れると、近視になると考えられています。

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病的近視とは

病的近視とは

病的近視とは、強度近視が進行し、眼球が前後に大きく引き伸ばされることで、網膜や視神経などの眼球後方の組織に影響を与えている状態です。

病的近視になると、さまざまな病気を引き起こし、視力が低下します。

通常、眼球の直径は約24mmですが、眼軸長が26.5mm以上に伸びたり、近視の度数が-6.0Dを超える場合に強度近視とされます。

軽度の近視は眼鏡やコンタクトレンズで視力を維持できますが、強度近視が進行すると、視機能に深刻な影響を及ぼす病的近視に発展する可能性があります。

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先天性近視と関連疾患

先天性近視と関連疾患

通常、乳幼児の目は軽度の遠視状態にあり、成長とともに正視に近づき、学童期から近視が進行します。

しかし、まれに幼少期から強い近視(先天性近視)が見られることがあります。

先天性近視は、先天性の眼疾患や全身疾患に関連することが多く、早期発見と他の異常の有無を確認するための十分な検査が必要です。

代表的な関連疾患として以下が挙げられます。

スティックラー症候群

網膜剥離や強度近視を引き起こす疾患です。

網膜が非常に薄くなるため、網膜剥離のリスクが高く、失明する危険性もあります。

マルファン症候群

目の水晶体の位置がずれる「水晶体亜脱臼」や強度近視を引き起こす疾患です。

眼軸が長くなることで強度近視が進行し、網膜剥離が起こりやすくなります。

家族性滲出性硝子体網膜症

網膜と硝子体に異常を引き起こし、網膜剥離や黄斑変性などが進行しやすくなります。

早発型緑内障

生まれつき高い眼圧が原因で視神経が損傷し、視力低下を引き起こす疾患です。

幼少期から進行する強度近視とともに、視野が狭くなるなどの症状が現れます。

先天停止性夜盲

夜間や暗い場所での視力が極端に低下する疾患です。

視力が低下するほか、網膜の異常による強度近視が見られることもあります。

網膜有髄神経線維

網膜の神経線維が通常よりも厚く覆われることで、視力に影響を与える疾患です。

視界の一部が見えにくくなったり、視力低下が生じることがあり、近視が進行することもあります。

また、未熟児は角膜や水晶体の発育不全によって近視になりやすいとされています。

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近視の進行を抑えるために

目をしっかり休ませる

読書や勉強、ゲーム、スマホなど、近距離での作業を続けると目に負担がかかります。

そこで、30分から1時間に一度は遠くを見るなどして、目を休ませることを意識してください。

体と同じように、目も休憩が必要です。

常に同じ距離だけを見続けないように心がけましょう。

屋外での活動を増やす

近視の原因の一つに、屋外での活動不足があります。

外で遊ぶ時間が減ると、近視のリスクが高まります。

日光を浴びることは目の健康にとって重要なので、無理のない範囲で、外での活動を増やすようにしましょう。

点眼薬を使った近視の進行抑制

当院では、自由診療で低濃度アトロピン点眼薬を用いた治療を行っています。

この治療法は、副作用のリスクを抑えつつ、近視の進行を遅らせる効果が確認されています。

シンガポール国立眼科センターの研究では、アトロピン0.01%の点眼を2年間続けた結果、以下のような効果と安全性が報告されています。

・近視の進行を平均で40%抑制(初期の研究では60%という報告もあり)

・アレルギー性の結膜炎や皮膚炎は報告されていない

・眼圧への影響はない

・点眼治療を中止しても調節機能の低下は見られない

・瞳孔が持続的に拡大することはない

・網膜機能への影響は報告されていない

この治療を受けた場合、治療を中止しても近視抑制の効果が続くことが期待されています。

ご興味がある方は、お気軽にご相談ください。

オルソケラトロジーでの近視抑制

オルソケラトロジーは、夜寝ている間に特殊レンズを装着することで、角膜の形状を変えて視力を改善する方法です。

この治療法は、近視の進行を抑える効果も期待されています。

朝起きてレンズを外すと、裸眼でもクリアに見える状態が続きます。

この治療は継続しないと視力は元に戻ってしまいますが、手術に比べて費用や心理的な負担が少ない点が特徴です。